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浮遊体

Floating objects

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  • アートユニバーシアード2002

    アートユニバーシアード2002は、2002年夏に千葉県東南部に位置する4つのニュータウンで展開されたアートイベントです。工学院大学藤木研究室の学生たちとともに作品を制作しました。 舞台となった4つの住宅地は、それぞれ開発のコンセプト、年数、規模、人口などが異なっているものの、戦後一貫して進められてきた住宅開発によって生み出されたという点で、日本の普遍的風景のひとつを形作っています。アートユニバーシアードは,アートを媒介として、これら4つのニュータウンを活性化し、ベットタウンといわれてきた郊外の住宅地の持つ魅力を再認識させるために企画されたものです。具体的には、美術・建築系の大学ゼミが、住民と関わりながらワークショップを行っていくという住民参加型まちづくりのイベントでした。首都圏を中心とする22大学38の美術・建築系のゼミが参加して行われました。

    Generating Improbable Events in an Unreal Town

    Art Universiade 2002 was an art-related event held across four newly developed towns in the southeast of Japan. Whilst being different in many aspects the four towns all shared the typical characteristics of housing developments that have been carried out in Japan since World War II. A shortage of time and funds has meant these places have developed without the community spirit and warm feel of a naturally evolved town. The Art Universiade was intended to produce projects that could improve the environments in these towns and provide ideas for other such communities.

    Ryumei Fujiki decided to create three sub-projects, which would be related to one another through the concept: ‘floating objects’. The objective of the project was to shorten the psychological distance between the community and their local golf course, which accounts for roughly half of town itself.

    It was decided that for a single summer a group of sunflowers would float on the pond at the eighth hole of the Kiminomori golf course. These flowers were supported by Styrofoam disks. The intention of the project was to reach out to the community since these installations could be seen from the adjacent Sakura Park.

    On the day of a music concert, which was held by the Kiminomori Golf Club, the floating flowers were illuminated with a mystical blue light, creating a dramatic change from the scene portrayed during the day.

    The Solar Balloon Experiment was held next to the golf course in the Sakura Park. These balloons were made using a biodegradable plastic that can be recycled back to the soil. The air inside the balloons was warmed so the balloons would gradually rise into the air creating an unusual backdrop for the golf course and the town itself. The project was carried out as a workshop in which children from the local community came together to participate.

    Visitors to the Sakura Park can be seen by those playing on the golf course, thus creating a link that goes in both directions: to and from the course / community. The throngs of sunflowers, that inherently ought not to be there, gently sway in the breeze on the pond and are reflected on the water’s surface. This unusual scene based on natural elements would doubtlessly be remembered by visitors to the golf course and local residents alike.

  • コミュニティ・デザイン

    ここで私たちが要請されたのは、「コミュニティー・デザイン」でした。「コミュニティー・デザイン」とは、これまで専門家の仕事と考えられてきた「まちづくり」に住民が参加し、自ら発想し、実行していく「参加型まちづくり」を指しています。コミュニティー・デザイナーとして街に入り、住民と関わり、住民の街や生活に対する希望やアイデアを引き出して、それを形にしていくことが求められました。

    季美の森

    私たちは、候補となった4つのニュータウンのうち、東急不動産の開発した「季美の森」という町を選び、3つの作品を展開しました。季美の森は、ゴルフ場と町が一体的に開発され、町の約半分の面積をゴルフ場が占めるという、日本では極めて特異なニュータウンです。私たちが初めて季美の森を訪れた時の印象は、とても不思議で奇妙なものでした。ゴルフ場に面して立ち並ぶ瀟洒な家々。整った街並み。豊かな緑と青く拡がった空。ここには全てが揃っているように思えました。と同時に、街に必要な「何か」が決定的に不足しているようにも感じられたのです。計画的に、そして一気につくり上げられるニュータウンの宿命として、「時間」の不足は避けられないでしょうが、今回対象となった他の3つのニュータウンが、とにもかくにも街の成熟へと向かいつつあるのに対し、季美の森だけは、そうした成熟とは無縁であるかのように見えました。
     -とてもありそうにない街- 
    率直にいって、ここにどのようなコミュニティが成立しているのか、または、しうるのか容易には想像できませんでした。しかし、だからこそ私たちは、季美の森を選んだといえるかも知れません。

    コンセプト

    〈ありそうもない街で、起きそうにない出来事を起こすこと。〉

    誰も想定していない場所を選ぶこと。約200ヘクタールある季美の森の半分を占めるゴルフ場は果たして街の一部といえるのかどうか。こうして私たちは、まずゴルフ場を敷地に選ぶことからスタートしました。
    1)環境のもつ潜在力を引き出し,際だたせること。
    2)ただ並存しているだけでなく,街とゴルフ場の距離を今以上に近づけること。
    3)環境に負荷を与えず,会期終了後は,できるだけ簡単に元の姿に戻すこと。
    このような基本方針のもとにブレーンストーミングを繰り返すうち、千葉県が現在力を入れている『菜の花エコプロジェクト』からの連想で、種がとれる夏の花として「ヒマワリ」を使うというアイデアが浮かんできました。その一方で、ありそうもない出来事として、空気よりも重い物体が自然に浮かび上がる可能性について議論しました。ヒマワリが咲き乱れ、巨大な物体の浮かぶゴルフ場というイメージが、次第にわたしたちの中で膨らんでいきました。

  • 作品解説

    1.ゴルフ場の池に浮かぶヒマワリ

     風景の共有/視点の転位

    円盤型をした発泡スチロールの浮力を利用して、「季美の森ゴルフ倶楽部」の8番ホールにある池に浮かべられたヒマワリの群。ひと夏だけの風景を共有することで、街とゴルフ場との心理的な距離を近づけることを目的としています。この風景は、隣接するさくら公園から眺めることができるとともに、逆にゴルフ場から街を見る視点を提供する意図もありました。
    本来そこにあるはずのないヒマワリの群は、池の上で風にゆられ、水面にその姿を映し出します。「自然」をキーワードとしてつくりだされた非現実的風景は、ゴルフ場への来訪者や住民の心に、ひと夏の思い出として刻まれたことでしょう。

    2.音楽会のためのライトアップ

     風の軌跡/静けさの音楽

    「季美の森ゴルフ倶楽部」が主催する音楽会の当日、昼間までの風景とは一変して、そこには神秘的な淡い青色をした光の花が咲き乱れました。ヒマワリを支える発泡スチロールの中央に設置された、生分解性プラスチックの半透明な筒と発光ダイオードによる照明灯は、中に注入されたヘリウムガスの浮力と風の力によって、まるでダンスを踊っているかのように揺られ、一夜限りの幻想的な風景をつくり出しました。たった数時間の出来事でしたが、音と光による美しいコラボレーションが実現しました。

    3.ソーラーバルーン浮上実験 

     潜在力の測定/気圧の可視化

    宙に舞い上がる黒い円盤は、太陽光の力で浮かび上がるソーラーバルーンです。このバルーンは、土に還る素材である生分解性プラスチックを用いて製作されました。内部の空気が暖められ、徐々にバルーンが浮上していくときの不思議な感覚。同時に、視覚によっても自然のもつ力を実感する事ができます。
    こどもたちとともに行ったこのワークショップは、度重なる試作実験の失敗にも関わらず、奇跡的に成功しました。

  • 開催地 千葉県山武郡大網白里町季美の森
    期間 2002年7月〜8月
    写真 Eiji KITADA, Fujiki Studio
    その他

    『新建築』2002年9月号
    『CREATIVE EVENTS』(ハードカバー、Links International社刊)